コカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズは、ファイナンス機能のスリム化、計画プロセスの自動化、レポートの最適化を目的としたデジタルトランスフォーメーションに着手しました。Boardのインテリジェント・プランニング・プラットフォームを活用することで、同社は製造工場から個別の自動販売機に至るまで、サプライチェーン活動を完全に可視化できるようになり、主要なビジネスドライバーを活用して計画プロセスを迅速に管理できるようになりました。また、全体的な計画効率も大幅に向上しています。
Boardを使用すると、一瞬で統合できます。 文字通り、ワンクリックで48の製造工場と85の倉庫を統合できます。
Ivan Evstatiev
Senior Manager Planning & Performance ManagementBoardプロジェクト概要
- 部門：サプライチェーン・ファイナンス
- 導入ソリューション：統合型コーポレートプランニング – ドライバーベースのサプライチェーン計画および予測
- プロジェクトの範囲：製造（48工場）、倉庫管理（85拠点）、コールドドリンク事業および物流
- ユーザータイプ：CFO、SCM部門責任者、コントローラー、部門・工場マネージャー
出発点：サプライチェーンの「グレーな世界」にスポットライトを
コカ・コーラが直面していた課題と、それに対するBoardのソリューションを理解するには、まず同社が掲げたサプライチェーン・ファイナンスの変革方針を確認する必要があります。その指針とは、「よりスリムなファイナンス」「計画業務の自動化」「レポーティングの最適化」の3つです。 コカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズのシニアマネージャー（プランニング＆パフォーマンス・マネジメント）、イヴァン・エフスタティエフ氏は次のように述べています。
これは、複雑なコーポレートファイナンスの事例をシンプルに——あるいは少なくとも大幅に簡素化した——ビジネスケースの実話です。
この変革を実現するため、グループは以下の3つの連携した介入領域を特定しました：
- 「クラシック」なファイナンス手法から、ドライバーベースの計画（Driver-Based Planning）への移行という計画手法の進化
- ExcelやAccessから脱却し、統合型コーポレートプランニングと分析を実現するモダンなソリューションの導入というデジタル革新
- 組織全体のマインドセットとチーム間コミュニケーションの強化
要するに、グループは新たな計画アプローチとソフトウェアソリューションを組み合わせ、全社的なコミュニケーションを基盤とする新しいスタイルを構築しようとしたのです。 イヴァン氏はこう語ります：
この変革には、当社のサプライチェーン・ファイナンス部門のほぼ全域、つまり“コカ・コーラの世界”の半分が関与しました。私たちはこの分野を『グレーな世界』と呼んでいます。なぜなら、営業やマーケティングといった目に見えやすい部門と比較すると、サプライチェーンは技術的・財務的に複雑性が高いためです。そのため、私たちのビジョンにファイナンス部門を巻き込むことは極めて重要だったのです。
現場で進む変革：ドライバーベースの計画
ドライバーベースの計画（Driver-Based Planning）の概念は、ひと言で表すなら「財務計画を、業務データやビジネスドライバー／指標（またはKBI＝Key Business Indicators）を通じて説明するもの」です。 これは、従来の計画手法では実現できなかった「目標」「予測」「リソース配分」のギャップを埋めるものです。 コカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズは、財務と業務の分析・計画の両方を統合し、ドライバーベースの計画を効果的に実行できるソリューションを求めていました。
Boardのインテリジェント・プランニング・プラットフォームは、よりスマートな計画、実行可能なインサイト、そしてより良い成果を提供できる点から、コカ・コーラのニーズに最適なソリューションとなりました。 さらに、イヴァン氏が強調するように、Boardはドライバーベースの計画における最も重要な要件の一つを満たしていました：
「私たちが『ドライバー』と呼ぶ変数の中から、経営層が実際にコントロール可能な具体的なものだけを選び出すこと。これにより、ドライバーベースの計画は“消化しやすく”なり、ファイナンスチームと業務部門のパートナーとの間に、ようやく橋がかかるのです。」
コカ・コーラがドライバーベースの計画活動においてモニタリングおよび管理しているKBI（主要ビジネス指標）は、以下のように分類されています：
先行KBI（Leading KBI）
- 販売量
- 生産量
- フルタイム換算従業員数（FTE）
- 生産性
遅行KBI（Lagging KBI）
- 人件費の差異
- ラインスピード
- 返品数
「生産ラインを想像してみてください——たとえばボトルや缶詰のラインです。このラインには、1時間あたりの処理本数や、従業員の生産性に基づく特定の生産性レベルがあります。たとえば、4人のオペレーター、1人の技術者、2人の設備保全プランナーで構成されたチームがそのラインを稼働させているかもしれません。そして、そのライン上では、所定の生産量または見積もられた生産量が達成される必要があります」と、イヴァン氏は説明します。
Boardを導入したことで、コカ・コーラは上記の缶詰ラインで働くオペレーター、技術者、設備保全プランナーに対して支払うべき給与、社会保険料、給与税、その他の費用を容易に確認・分析できるようになりました。また、同社はその生産ラインが消費している電力や水の量、さらには必要なメンテナンスや予防保全の量についても即座に把握することが可能になっています。 これらのレポートや分析は、Boardプラットフォーム自体が持つシミュレーション機能とシームレスに統合されています。たとえば、生産管理者が特定の生産ラインにおける作業チームの編成パターンを仮に変更し、それに伴って勤務スケジュールを変更した場合の影響を評価したいとします。Boardのシミュレーション機能を使えば、その変更による財務的インパクト、たとえば人件費や光熱費の増減を可視化でき、それにより最適なチーム編成や勤務スケジュールの選択が可能になります。
「ボタンをクリックするだけで、背後ではいくつかの計算とアルゴリズムが動き、私たちは業務データを即座に完全に把握できるようになります。実際、瞬時に本格的な計画を得ることができるのです。これこそが、ファイナンスチームと業務部門のパートナーを結び付け、相互に対話を促すというコンセプトの核心です。こうして、オペレーション担当者や、想定されるあらゆるビジネス部門の人々が、業務データと財務データを直接結び付け、自社の健全性をコントロールできるようになります。以前の私は、ある特定の損益計算書の項目を調整する際に、直感に頼って意思決定をしていました。しかし今日では、Boardのおかげで、その判断を業務データに基づいて正当化できるのです」と、イヴァン氏は続けます。
製造工場から自動販売機まで：すべてのFMCGサプライチェーン活動をBoardプラットフォーム上で管理
FMCG企業であるコカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズにとって、サプライチェーン全体の可視化と、各生産・配送ステージ間の完全な連携を常に確保することは不可欠です。 そのためには、厳密な計画プロセスと頻繁な予測、そして締め処理のモニタリングが必要となります。
同社のコールドドリンク事業の一環として、地域の店舗に設置されているすべての自動販売機についても、設置場所、稼働状況、移動、保守といった要素を一括で管理・制御する必要があります。 製造、倉庫、物流などの各部門における事業部門マネージャーは、このプロセスから生まれる膨大なデータから具体的なビジネス価値を引き出し、バリューチェーン全体に健全な情報の流れを生み出すことが求められます。イヴァン氏は次のように強調します：
「Boardでカバーしているのは、現代のサプライチェーンが関わるありとあらゆる活動です。具体的には、48の工場、85の倉庫、流通に関するあらゆる領域——取引から支店単位の配送部門まで——すべてが含まれます。そして、それらすべての拠点、工場、物流のあらゆる側面がBoardプラットフォーム上で統合されているのです。」
プロジェクトのスコープ
- 週次・月次の予測（中間月・月末）
- 締め処理活動のモニタリング
- 年間の事業計画／予算策定
- 国単位での本格的な統合と月次レポーティング
- ユーロパシフィックグループ／コカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズ全体のサプライチェーン統合
「私たちが取り組んだ変革領域——新しい計画手法、デジタル化、新たな組織文化のマインドセット——を踏まえると、Boardはプロジェクトの目標達成を大きく後押ししてくれました。時間効率の向上、プロセスの自動化、標準化、データの一元管理に加え、操作性やシステムの保守性向上といった面でも高い成果をもたらしています。」
ファイナンス業務の時間効率化：手作業は10%、デジタル化が90%
Boardを活用したファイナンス業務のデジタル変革により、コカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズは大幅な時間短縮を実現しました。これにより、チームは手間のかかる手作業や付加価値のない業務に時間を費やすのではなく、分析や意思決定、そして継続的な改善の機会発見に集中できるようになりました。イヴァン氏は次のように説明します：
「当社のファイナンス・サプライチェーン活動における入力のうち、10%は各国特有のビジネスインサイトに基づいていますが、残りの90%は、バリュードライバー手法と業務データの自動入力によってあらかじめ作成された損益計算書のアウトプットです。ファイナンス担当者に、計画を立てるための面倒な一連の作業を強いるのではなく、この領域をデジタル化したいと考えていました。そして、それをBoardプラットフォームによって実現できたのです。」
データ転送における時間効率：従来の24時間から15分への変革
ファイナンス面での効率化に加え、Boardの導入によりコカ・コーラはデータ転送の観点でも大幅な効率向上を実現しました。 かつて同社は、システム性能の制約により「一晩かけてのデータロードと転送」が当たり前という“文化”にとらわれていました。 しかし、今日の企業は膨大なデータを扱っており、（ほぼ）リアルタイムで更新された有益な情報が不可欠です。これにより、従業員は迅速に最新の有意義なインサイトを得て、目標設定から業務実行までのプランニング全体を加速させることができます。
イヴァン氏は新たなアプローチの利点を次のように強調します：
「現在では、ERPシステムからクラウド、そしてクラウドからBoardへのデータ転送を15分おきに行っており、各国ごとにデータ転送の進捗をリアルタイムでモニタリングできます。これにより、損益計算の観点から完全な財務諸表を作成することも可能です。以前のように24時間サイクルで行っていた時代と比べると、この“15分”というスピードはまさに革命的で、現状打破と型破りな発想の象徴だと言えるでしょう。」
ライブステータストラッカー：急速な変化に対応する自動化の力
FMCG業界では、他業界以上にごくわずかな数値の変化が、サプライチェーン統合の最上流に至るまでのプランニング全体に多大な影響を及ぼすことがあります。 Boardの自動化機能を導入する前、コカ・コーラは複雑にリンクされたExcelファイルやAccessデータベースを使っており、複数のユーザーが同時に情報にアクセスできないこともありました。 各チームやマネージャーは、情報の整合性を確保するために定期的にやり取りをする必要がありました。 CFOからSCM部門責任者、コントローラー、部門・工場マネージャーに至るまで、毎月互いに連絡を取り合い、「この計画の数値はまだ作業中か？ それとも信頼してよいのか？」を確認したうえで、次のステップへ進めるという流れでした。
イヴァン氏は、現在どのように改善されたかについてこう語ります：
「残念ながら、財務諸表や予測を作成して、すべてが完了したと思っていても、翌月になって『数値が変わっている！』と気づくことがよくありました。どこかの誰かが、ある計画の一部を変更し、それがすべてに影響を及ぼしていたのです。ですが今では、Boardのステータストラッカー・コックピットのおかげで、誰がまだ作業中か、誰が完了しているか、誰が計画プロセスに課題を抱えているかを常にモニタリングできるようになりました。」
“究極のボタン”：ワンクリックでの統合
コカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズは、これまで数多くの合併・買収を経てきました。各法人は異なるバックグラウンドを持ち、それぞれ独自の計画手法、ビジネス指標、ロジック、方法論を持ち込んでいます。Boardを活用することで、同社は国単位での統合を自動的に実行でき、データの一貫性を保ちつつ、財務・業務の成果に対する深いインサイトを得ることが可能になりました。
Board内には『すべて承認』という赤いボタンがあり、イヴァン氏は次のように語ります：
「私たちはこの小さな赤いボタンを『究極のボタン（Mother of All Buttons）』と呼んでいます。なぜなら、これひとつで統合が一瞬で完了するからです！そう、統合はワンクリックでできるのです！48の製造工場、85の倉庫の統合も、たったひとつのボタンで可能です！最初はとても懐疑的でしたが、今では自信を持って“本当に動く”と言えます！」
Board Boardは、戦略・財務・業務を統合し、ビジネス意思決定を後押しする重要なインサイトを提供します。実際、Boardの利点を活かすことで、コカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズは標準化とデータの一元化を実現し、さらにブルガリアにあるシェアードサービスセンターおよびセンター・オブ・エクセレンスの機能も強化しました。このセンターは、データのロードや入力を一手に担い、すべての国に共通する標準化された計画プロセス、分析、レポートを一拠点から集中管理しています。
舞台裏：データの透明性
Boardの迅速な開発環境によって、コカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズは、予測の自動生成を含む自動化と標準化を効果的に組み合わせることができました。 手法的な原則と高度なテクノロジーの融合によって実現したこの取り組みは、同社にとってまさにデジタル革命といえるでしょう：
「革命を生むのは、単一のアプリケーションではありません。私たちがBoardプラットフォーム上に構築したすべてのアプリケーション、それを支えるアーキテクチャ、柔軟性、そして洗練されたGUI（グラフィカル・ユーザー・インターフェース）——これらすべての融合こそが鍵なのです。Boardは、全員が追い求めていた効率性を実現し、マネジメントが計画プロセス全体において期待していた成果を確かに届けてくれました。」
しかし、この種のプロジェクトを成功させるには、堅牢なデータ基盤が不可欠です。最適化、効率化、デジタル化、自動化は氷山の一角にすぎません。 その下には、意思決定プロセス全体におけるデータの透明性といった、さらなる利点が存在するとイヴァン氏は語ります：
「Boardが当社のデータの可用性と整合性を保証していると言うとき、私は単に“ゴミを入れればゴミが出る”という従来の考えを指しているのではありません。私が意味するのは、タイムリーで高品質なデータを提供し続ける、持続可能なプロセスを組織に根付かせる力のことです。」
社内全体を巻き込み、変革を推進するには：使いやすさとコミュニケーションが鍵
組織にとって重要な変化を導入する際には、関係者全員を積極的に巻き込むことが不可欠です。 そうすることで、導入は成功しやすくなり、部門や階層を超えて広く受け入れられるようになります。 その重要性について、イヴァン氏は次のように述べています：
「こうした変革を迅速かつ戦略的に実現するには、自分たちの“対象者”をよく理解しておく必要があります。社内のすべての関係者が、経営陣の目指す方向性に確実に足並みをそろえなければなりません……さもなければ、大きな障壁が立ちはだかることになるでしょう。」
プロジェクトマネジメントの技術的支援に加え、Boardプラットフォームの使いやすさと柔軟性は、コカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズが新しいソリューションを効果的かつスムーズに導入するうえで大きな助けとなりました。エンドユーザーの視点から見ると、BoardはExcelや他のMicrosoft Office製品と統合されており、これらは従来からファイナンス部門に深く浸透しているため、ユーザーにとっても非常に導入しやすい環境が整っています。
さらに、現在ではファイナンス関連のアプリケーションはIT部門に依存することなく、ファイナンスチーム自身が直接管理しています。
Boardに組み込まれたワークフロー機能により、各国およびEuropacific全体レベルにおいて、コカ・コーラ・ユーロパシフィック・パートナーズの従業員と経営陣の間で可視性が大きく向上しました。 同一のプラットフォーム上で、各国の製造工場、倉庫、物流プロセス、そしてコールドドリンク事業をモニタリングすることが可能になりました。 この「詳細な視点」と「全体像」の組み合わせが、ユーザーの利用率向上につながり、現場の活動をマネジメントが正確に把握できる仕組みを実現しています。 さらに、Europacific全体から提出されるすべての計画や予測の進捗状況を、マネジメントチームが同じプラットフォーム上で一元的に管理できます。
社内では、Boardの処理スピードやクラウド基盤の使いやすさといった技術的なパフォーマンスも高く評価されています。 イヴァン氏はこう締めくくります：
「当社には、各国にローカルチームと中央チームの両方があり、誰もがBoardの恩恵を実感しています。すべてのユーザーが同一のプラットフォームに統合されており、Boardのおかげで、計画サイクルの一部分や月次レポートだけでなく、計画全体の範囲をカバーできるようになりました。計画サイクルに関与するすべてのユーザーが、すでにBoardを利用しており、それが組織全体のコミュニケーションを促進し、変革を実行に移す力となっているのです。」
