BASF Care Chemicalsは、グローバルネットワーク全体で約3,000製品に及ぶ複雑な数量計画を管理する中で、業務の効率化を目的にBoard Enterprise Planning Platformを導入しました。このデータドリブンなソリューションは、主要な計算業務の自動化、生産上のボトルネックの特定、部門間の統合計画を可能にします。これにより、業務の透明性が向上し、プロセスの高速化、意思決定の精度向上、財務計画における信頼性の高い基盤の構築が実現しました。
BASF Care Chemicals事業部は、化粧品、洗剤、クリーナーといった消費財業界向けに、プレミアムな成分および処方を提供する、世界最大級の化学品サプライヤーの一つです。同時に、建設業や農業用資材（Crop Protection）などの幅広い産業分野においても、産業用フォーミュレーター向けの高機能ソリューションを展開しています。持続可能なイノベーションに強くコミットしており、現在の市場ニーズへの対応はもちろん、長期的なサステナビリティ目標の達成に向けた取り組みも積極的に推進しています。
複雑性への挑戦
BASF Care Chemicalsにおける数量計画は、極めて高い複雑性を伴う難易度の高い業務です。30の生産拠点で3,000以上の製品を扱う中、プランナーは多段階の生産工程とグローバルなサプライチェーンを含む複雑な計画プロセスに直面しています。このプロセスは、財務計画を含む下流工程にも大きな影響を及ぼします。各生産段階にはキャパシティのボトルネックが存在し、既存の計画がしばしば中断されるほか、現代のグローバルサプライチェーンが抱える不確実性により、その影響はさらに深刻化します。こうした複雑性をExcelベースのグローバル計画プロセスで管理することには限界があり、その課題が顕在化する中で、持続可能なソリューションの先駆者である同社は、抜本的な改革の必要性を認識。Board Enterprise Planning Platformを中心とした包括的なプロジェクトを始動しました。
容量ベースの数量計画を効率化
こうした課題に対応するため、BASF Care Chemicalsでは、まず独立した需要計画から始まる、容量ベースの数量計画を活用しています。地域のアカウントマネージャーおよびマーケティングチームが、過去の販売実績、貢献利益率、現在の販売および収益計画をもとに、今後数年間の市場需要を予測します。
その後、需要計画で合意された数量を各生産拠点に割り当てることで、容量計算が行われます。新たに導入されたプラットフォームにより、チームは原材料の必要量を算出し、多段階にわたる生産の複雑性にも対応できるようになりました。特に、プラットフォームは中間製品の部品表（BOM）解決における循環参照などの問題も自動的に検出・解消します。
さらに、各工場で異なる生産速度も考慮に入れ、生産時間を重量に換算して、実現可能な数量を正確に算出します。そのうえで、容量の最適な活用率を計算し、あらかじめ設定された計算式とワークフローにより、ボトルネックの予測と対処を行っています。
選定された生産拠点では、合意された生産数量が確定され、次の計画プロセスへとシームレスに統合されることで、計画サイクル全体が完結します。
しかし、理論だけでは、計画に影響を及ぼす多様な要因すべてを捉えることはできません。中間製品の優先順位付けや、貢献利益率・過去の販売実績といった経済的要素の考慮、さらにはサプライヤーの制約や社内在庫の制限など、様々な条件に対応するためには、継続的な手動での調整が不可欠です。こうした調整は、計画サイクル内で透明性を持って記録され、複数回の反復的な見直しを経て数量計画が最適化されます。その結果、業務財務計画とのスムーズな連携が実現され、貢献利益率と収益性の向上につながっています。
その成果として、各生産拠点への割り当てを基盤とした、グローバルな統合型財務計画フレームワークが構築されました。本フレームワークには、中間期の割り当て、製品別の業務計画、予測、ポートフォリオのシミュレーション、戦略立案といった主要領域がすべて組み込まれています。
連携されたデータによる包括的な可視化
新たに導入されたプラットフォームは、それまで分散していた複数のシステムからデータを統合することで、ビジネスの各領域における透明性の向上とプロセスの迅速化を実現しました。プロダクトマネジメント部門は、需要の変動にも柔軟に対応できるようになり、その変更内容は生産能力の計算にスムーズに反映されます。さらに、中間製品の必要量も自動的に算出され、計画プロセス全体のスピードが大幅に向上しています。
ポートフォリオ管理においては、計算に用いられるデータ、アルゴリズム、ルールに対する可視性が高まったことで、新製品の投入や生産計画の変更に関する意思決定がより的確かつ迅速に行えるようになりました。
また、このプラットフォームは長期的な計画においても信頼性の高い基盤を提供し、生産設備への先行投資や資産管理の最適化を可能にしています。
コントローリング部門にとっては、「シングルポイント・オブ・トゥルース（信頼できる唯一の情報源）」が全体の予算策定プロセスにおける透明性を高め、部門間の連携を促進するとともに、信頼性の高いデータに基づく財務計画の意思決定に対する確信を強めています。
Boardの需要計画ソリューションを活用することで、BASF Care Chemicalsは数量計画の最適化にとどまらず、効率性、俊敏性、そして的確な意思決定という企業文化を育んでいます。競争の激しい業界、そして絶えず変化するグローバル環境の中で、これにより同社は持続可能な成長と収益性の向上を実現しています。
