

Groupe SEBのいくつかの複雑な計画およびレポートのレガシーシステムでは、変更が生じた場合ITに依存してしまう、財務部門は、プロセスを簡素化し柔軟性を高めるためにBoard意思決定プラットフォームを選択しました。アプライアンスメーカーである同社は現在、Boardプラットフォーム内に多数の相互リンクされたアプリケーションを構築しており、エンタープライズパフォーマンス管理(EPM)のシームレスなアプローチを実現しています。
世界約150か国で事業を展開するGroupe SEBは、Tefal、Rowenta、Moulinex、Imusa、Lagostina、Rochedoをはじめ、およそ30の有名ブランドから成る独自のポートフォリオを有しています。どのブランドも、複数形式の小売アプローチでマーケティングと販売が行われています。創設以来、同グループは世界中の消費者の暮らしを変える革新的な製品によって日常に革命をもたらす企業として重要な役割を担ってきました。
Groupe SEBのストーリーは、フランス・ブルゴーニュ地方でAntoine Lescure社が誕生した1857年に始まります。バケツ、じょうろ、厨房用品を専門とするブリキ製品メーカとして産声を上げた同社は、1953年、圧力鍋の発売を機に大きな一歩を踏み出しました。それが国内で新たな局面をもたらし、フランス国民の習慣を根本から変えることになります。
Groupe SEBは、イノベーション、国外での市場開拓、競争力、顧客へのサービスに重点を置いた長期戦略を展開しています。多様な文化と多彩な創造力をもつ3万3,000人の従業員を世界各国に擁し、全従業員が持続可能な開発に向けた同じ価値観とコミットメント、プロ意識、イノベーションに対する熱い思いを共有しています。
Groupe SEBのファイナンスIT担当ディレクタであるPhilippe Martelo氏は、さらに詳しく説明します。
今や当社は小型家電における世界基準となり、各種製品カテゴリでも、多くの地域においてもナンバーワンに選ばれています。当社が目指しているのは、当業界におけるグローバルベンチマークになることです。当社の目標は、消費者の現在のニーズを満たし、個々の希望や期待の先を行く新たな製品とサービスの創造によって、世界中の「消費者の日常生活をもっとシンプルかつ快適にする」ことです。当社の目標のこのような観点と、当社のミッション(高い収益性の確保を優先事項にすることで永続的な価値の創出を目指す)は、Board Internationalと共通しているものだと考えています。
多くの企業の例に漏れず、Groupe SEBも自社の業績管理業務で諸々の課題に直面していました。例えば、原材料価格の変動、市場や流通の再編、破壊的ビジネスモデルの出現、業界における変化の加速などです。SEBは、予算編成や予測業務にかなりのリソースを注ぎ込んでいましたが、それらのプロセスは多くの人手を必要とし、アジリティに欠け、必ずしも戦略的に整合性のとれたものではありませんでした。
同グループの管理報告システムは、SAP BWをベースとしていました。その重点は履歴データに置かれており、シミュレーション機能が搭載されておらず、予算編成や予測プロセスでユーザをサポートできていませんでした。また、応答時間が長い、人間工学に基づいていない、データを四半期単位で表示できないといった問題も抱えていました。さらに、SEBの業績報告プロセスは、柔軟性に乏しく、ワークフロー管理機能を備えていないうえ、的外れな結果を生成しがちでした。こうしたプロセスを簡素化して、柔軟性が高く、適切な結果を示すシステムが必要なのは明白だった、とMartelo氏は述べています。
当社のSAP BWをベースとする既存の報告システムは複雑で、フィードが難しい分析の次元や軸が数多く含まれていたため、時間のかかるプロセスになっていました。熟練者向けのツールだったため、財務部門のユーザがIT部門に依存せず自律的に利用することができませんでした。増え続けるデータへの対応に迫られるなか、従来のシステムでは柔軟性の妨げとなるばかりか、手元にある大量のデータを制御、処理して、最大限有効に利用するための計画機能や予測機能も欠如していました。旧システムの『重さ』とその複雑さに苦しめられていた当社では、それらが機能的制約や技術的欠陥となっていたのです。これらのプロセスの柔軟性のなさに対して、役員会から不満の声が聞こえ始めました。標準原価を計算したり、工場の生産量の変化に関する更新を行ったりといった作業に時間がかかっていました。
自社のレガシーシステムを使ってこれらすべての障害を克服するには、多額の投資と、あまりにも多くのリソースを消費する長期的なプロジェクトが必要になります。そのためSEBは、既存のSAP BWベースの報告システムに加えてエンタープライズパフォーマンス管理(EPM)ソリューションでこれらの課題を克服することを目標に、新しいプロジェクトに乗り出すことにしました。EPMソリューションがプロセスにアジリティをもたらし、同グループの戦略的計画を達成することで、「アジャイル」アプローチの採用を可能にすることが期待された、とMartelo氏は説明します。
『アジャイル』アプローチは、柔軟なソリューションを実装する必要があった当社にとって重要なものでした。質がそれほど高くはない従来のアプローチでは、予算を達成することや、期限に間に合わせることは到底できません。一方、アジャイルアプローチなら、可変要素はカレンダーや手段ではなくスコープとなり、いつでも目標を達成できるようになります。
Groupe SEBの管理計画、基本データ、報告プロセス、およびツールの堅牢性が、より軽量で柔軟性の高いエンタープライズパフォーマンス管理ソリューションを確信をもって導入できるチャンスをもたらしました。それは、わかりやすく使いやすい、直感的かつ視覚的なものであっただけでなく、より優れたアジリティ、スピード、最先端のレポート作成機能を備えたものでした。
以下の点が、SEBのプロジェクトにおけるビジネス上の主な優先事項でした。
エンタープライズパフォーマンス管理ソリューションは、既存のBWベースのレポートに代わるものでなければなりませんでした。また、計画、予算、予測、再予測を、月、四半期、年、複数年単位で生成することで意思決定プロセスをサポートできる必要もあります。同じEPMプラットフォーム上で、Groupe SEBはシミュレーションとビジネスモデリングを、調達価格、工場の固定費の吸収、What-ifシナリオに関連付けて実行できる必要がありました。
市場レビューの結果、ビジネスインテリジェンス、計画、予測分析が単一の環境に統合された、Boardの意思決定プラットフォームが採用されることになりました。Martelo氏はその決定について以下のように説明します。
11社のベンダーから始め、Boardプラットフォームと市販の6つのEPMソリューションを比較した結果、完全性、性能、使いやすさにおいてBoardが最も優れた製品だという結論に達しました。当社は特定の側面に価値をもたらし、複数のソリューションの機能を向上させ、それらを同一プラットフォーム内にシームレスに統合したいと考えていたのです。
この変革的なプロジェクトには、その目的を示す「FAST」という略称が付けられました。Martelo氏は、望ましい成果について以下のように述べています。
『アジャイル』アプローチによってBoardの力と人間工学を利用することの主な目的は、柔軟性を拡大して、シミュレーション機能を取り入れ、スマートな使いやすい複数の専用ソリューションで構成される財務ツールボックスを漸進的に構築することでした。
SEBでのBoardプロジェクトの中心は、先述の「戦略的方向づけ」ソリューションに代表され、同社のマトリックス構造に基づいている、とMartelo氏は説明します。
2018年5月15日にBoardvilleで紹介されたGroupe SEBの簡略化された組織図
当社には3つの主要な戦略的事業部門(SBU)として、調理器具部門、キッチン用家電部門、ホーム&パーソナルケア部門があります。これらは主に戦略マーケティングと製品開発に力を注いでいます。その役割は、未来の製品の構想、開発、製造や、グループ外からの調達です。これらのSBUは、プロフィットセンタではなく、『コストセンタ』と見なされています。なぜなら、彼らがその製品を売る対象は、社内の販売地域(大陸、エリア、市場)だからです。そこには、製品ラインや製品ファミリーごとに編成されたSEBの営業部門があります。次に、製品の責任が各ローカルチームに移り、ローカルチームはしかるべきSBUの監督のもとでそれらの製品の開発を進めます。
SEBのビジネスモデルの第1レベルは、製品と販売地域という2つの軸で構成されています。そして第2レベルの軸は、ブランド、生産拠点、マーケティング、開発です。
戦略的事業計画が組織全体にわたって構築されます。このプロセスは、ベースラインとなる実績および予算の損益計算書(運営コストや売上成長を含む)をコーポレートファンクション部門が提案するところから始まり、それが5カ年計画策定時のベースとなります。次にSBUが、この提案に合わせて独自の計画の草案を作成します(研究開発や製品の発売など)。
以前はこの戦略的計画の管理にスプレッドシートが使われていたため、ミスが発生しやすいプロセスとなっていました。Excelファイルは柔軟性に欠けていたため、市場を問わずどのチームも、計画プロセスの前行程から受け取った運営コストやその他測定基準の制御と管理に苦労していました。そこで、Boardなら、強力なオーナーシップを効果的に定義できるのではないかと考えたのです。今では、誰もが各自の経費に責任を持つようになり、すべての数字と測定結果を合計すれば、当グループの正確な業績が得られるようになりました。これは、コーポレート部門、SBU、大陸担当部門は、異なる市場の経費を変更できないことも意味します。
特に戦略計画プロセスの最初のフェーズに注目してみると、Groupe SEBではBoardプラットフォームのシミュレーション機能を利用して、過去10年間の履歴データに関するデータベースラインを再処理することで、3つのキューブをフィードしています。先述の同社の軸や次元((製品ファミリー、市場、製品ライン、エリアなど)に基づき、SEBはシミュレーションキューブをコーポレート部門レベルで1つ、SBUレベルで1つ、大陸担当部門レベルで1つ構築して、5カ年事業計画をリリースします。Martelo氏は以下のように続けます。
当社では、Boardのシミュレーション機能をデータベースラインに適用しています。その理由には、当然ながら、当社の製品カテゴリが年々変化していたことや、新しいブランドが当社のポートフォリオに追加されていたことが挙げられます。従って、向こう5年間の計画を立てるには、過去に対する一貫した視点を持つことが重要になります。コーポレートファンクション部門が、グループの経費と販売目標の増加に関する具体的な前提を用意して、ビジネスモデリングプロセスを開始します。次に、SBUがそれぞれの研究開発パイプラインと発売を予定している製品を提示したうえで、販売や、異なる地域にまたがるビジネスについても独自の見解を示します。最後に、大陸担当部門が主導して、最終版の戦略的方向づけを提示してこのプロセスを終えます。
Groupe SEBでは、「戦略的方向づけ」ソリューションとともに、「スマートレポート」と呼ばれる処理も取り入れました。800以上のSAP BWベースのレポートをBoardで提供することで、以前のレポート作成プロセスにおける断片化を解消したのです。今では、SAPで作成された、あるいはこれから作成されるすべてのレポートが(キャッシュフローの予測や再予測といった新しいものも含め)、Boardにも即座に送信されるようになりました。また場合によっては、それらのレポートがBoardで直接作成されることもあります。
Groupe SEBのレポートプロセスでは、同社が「週次売上レポート」と呼ぶソリューションがBoardプラットフォーム上で特に優れている、とMartelo氏は説明します。
BoardのBI & EPM環境内で生み出されたこのソリューションのおかげで、当社は世界中に150ある子会社からの週次売上見込みの一元化を実現しました。毎週、各子会社から経営陣に当月および来月以降(最大6~12か月分)の売上予測が送られてきます。それらのレポートでは、1つの数字が示されていることもあれば、2つの数字に分けられていることもあります(ブランド単位と流通チャネル単位など、追跡したいトピックによって異なります)。また、ゆくゆくはこの一元化をサプライチェーンのS&OPにまで拡張する予定です。そのため、売上予測と運用を統合し、Boardの統合プラットフォームの特性を活かしていきたいと考えています。
Boardの統合BI & EPMプラットフォームはエンドツーエンドのアプローチに適しているのに加え、戦略面および財務面での計画や分析と組み合わせることで、Groupe SEBのような複雑な組織の業績を取り込むこともできます。SEBではこれらの機能を利用して、「業績結果分析(ROPA)」と呼ばれるソリューションを導入しました。Martelo氏は以下のように続けます。
当社では、1年間の業績から翌年の業績への推移を評価して、いくつかの影響に分離することができます。また、運営コストに対する明確な視点を持ち、マーケティング費、宣伝広告費、その他構造上の経費を区別しています。
Boardを導入したことにより、SEBの戦略的計画業務の柔軟性が大きく向上しました。各地域担当部門が、提案された損益計算書を基にそれぞれの計画を練ることが可能になっただけでなく、デフォルトで、損益計算書の運営コストが売上の変化に応じて、トレンド率に基づき変化します。ユーザはこのプロセスに沿って一進一退しながら、売上、宣伝広告の手段、運営コストの額などを調整できます。
Boardプラットフォームでは当社の計画プロセスが、コラボレーティブで、反復的な、柔軟性の高いものになりました。戦略的方向づけレベルでのシミュレーションプロセスから得られるコーポレート部門、SBU、大陸担当部門の3つのバージョンはそれぞれ独立していますが、各チームは他チームが作成したバージョンを確認して、そのデータに基づいて自チームのデータを入力できます。
「戦略的方向づけ」ソリューションは、SEBでのBoardプロジェクトの要であり、経営陣から高い評価を得ています。この製品が持つ特性の中で最も称賛を受けているのは、Boardの「スプリット&スプラット(split & splat)」機能です。この機能を利用すると、最も詳細なレベルまであらゆるバリエーションを即座に分散・展開できるので、インタラクティブなシミュレーションでビジネスユーザの大きなサポートとなります。
私たちは戦略的計画とシミュレーションに役立つBoardのソリューションに特に満足しています。このソリューションから、導入における今後の段階や、当社が開発を目指している新たなアプリケーションについて、多くのアイデアが得られます。例えば、当社ではこのソリューションに新機能を追加しました。ローカルシナリオ管理に役立つバージョン管理のロジックです。
BoardのSAP用コネクタによってサポートされているため、レポート作成プロセスや分析プロセスも大きく向上し、Martelo氏が言うところの「雪だるま効果」を生み出しています。
当社にとってBoardは、最先端の分析サービスの完全なスイートであると同時に、すべての技術的および機能的要件に効果的に対応できる拡張性のある柔軟なBIおよびCPMソリューションです。Boardを利用することで得られた数々のビジネス上のメリットの中から1つ挙げるなら、私は一種の『雪だるま効果』といえるものを挙げたいと思います。
今や新しいレポートの導入にかかる時間が大きく短縮され、財務部門も経営陣も、新しいアプリケーションのプロトタイプやモックアップを作成して、財務用ツールボックスに加えるための新たなツールやソリューションを生成できるようになりました。さらにBoardのおかげで、以前のレポートデータを現在の階層に基づいて再処理し、将来の動向予想に利用することで、さらなる価値をもたらすことも可能になったのです。
このような雪だるま効果により速やかに問題を解決できるようになったことで、新たなBIおよびCPMアプリケーションの管理、メンテナンス、導入におけるGroupe SEBの自己完結能力が上がりました。これが実現したのは、Board独自のプログラミング不要のアプローチのおかげでもあるというMartelo氏は、次のように締め括ります。
ソリューションの導入が迅速かつ効率的に行えるようになり、チームの参加意欲が非常に高まりました。私たちは多くのプロジェクトでBoardのソリューションを利用していますが、あらゆる面で期待を満たしてくれます。
この導入事例で示した内容および見解は、2018年5月15日のBoardvilleイベントでGroupe SEBが発表した情報に基づくものです。