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Groupe SEB

SEBにおける経営管理(EPM)

エンドツーエンドの予算編成、計画、およびレポート作成プロセスを変革し、150の子会社からの週次売上見込みの統合を可能に

Groupe SEBのいくつかの複雑な計画およびレポートのレガシーシステムでは、変更が生じた場合ITに依存してしまう、財務部門は、プロセスを簡素化し柔軟性を高めるためにBoard意思決定プラットフォームを選択しました。アプライアンスメーカーである同社は現在、Boardプラットフォーム内に多数の相互リンクされたアプリケーションを構築しており、エンタープライズパフォーマンス管理(EPM)のシームレスなアプローチを実現しています。

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  • Industry: Manufacturing, Specialty & Hardlines
  • 部門: Finance
  • 従業員数: 33,000名以上
  • 製造工場: 540か所以上
  • 営業展開国: 150カ国

Groupe SEB(グループセブ)は、世界約150か国で事業を展開。Tefal、Rowenta、Moulinex、Imusa、Lagostina、Rochedoをはじめ、およそ34の有名ブランドから成る独自のポートフォリオを誇り、各ブランドで複数チャネルの小売手法によるマーケティングと販売を行っています。創設以来、世界中で消費者の暮らしを変える革新的な製品を提供することで、同グループは日常に革命をもたらす企業として重要な役割を担ってきました。

Groupe SEBの歴史の始まりは、フランス・ブルゴーニュ地方でAntoine Lescure社が生まれた1857年。バケツやじょうろ、キッチン用品を専門とするブリキ製品メーカとして誕生した同社は、1953年、圧力鍋の発売を契機に大きな一歩を踏み出し、全国規模の企業に成長するとともに、フランス国民にとって基本的な生活習慣である料理のあり方を一変させることになります。

Groupe SEBが展開する長期戦略は、イノベーション、国外での市場開拓、競争力、顧客へのサービスに重点を置いたものです。

Groupe SEBのファイナンス情報技術担当ディレクタであるPhilippe Martelo氏は、さらにこう話します。

今や当社は小型家電における世界標準であり、各種製品カテゴリならびに多くの地域においてトップに立っており、目標は当業界のグローバルベンチマークになることです。消費者の現在のニーズを満たすだけでなく、個々の希望や期待を先読みしたこれまでにない製品やサービスを生み出し、世界中の消費者の日常生活をもっとシンプルで素晴らしいものにすることです。こうした当社の存在意義の観点、そして、高い収益性の確保を優先事項にすることで永続的な価値の創出を目指す当社のミッションは、Board Internationalと共通するものだと考えています。

課題:レガシーの計画システムや報告システムが生み出す無用の複雑さ

多くの企業がそうであるようにGroupe SEBも、原材料価格の変動や、市場・流通の統廃合、破壊的変化をもたらす事業モデルの出現、業界における変化の加速など、自社の業績管理業務でさまざまな課題に直面していました。SEBは予算編成や予測業務にかなりのリソースを投じていましたが、そのプロセスは多くの手作業を要し、アジリティに欠け、必ずしも戦略的に整合のとれたものではありませんでした。

同グループの管理報告システムは、SAP BWをベースとしていました。その重点は履歴データに置かれ、シミュレーション機能が搭載されておらず、予算編成や予測のプロセスでユーザをサポートしていませんでした。しかも、応答時間が遅い、人間工学に基づいていない、データを四半期単位で表示できないといった問題もありました。加えて、SEBの業績報告プロセスは融通が利かず、ワークフロー管理機能を備えていないばかりか、的外れな結果を生成しがちでした。こうしたプロセスを簡素化して、より柔軟性が高く、適切な結果を示すシステムが必要なのは明白だった、とMartelo氏は述べています。

SAP BWをベースとする既存の報告システムは複雑で、フィードが難しい分析の次元や軸が数多く含まれていたため、プロセスに時間がかかっていました。どのツールも専門家向けに設計されていたため、財務部門のユーザがIT部門に頼らず運用することは不可能でした。増え続けるデータへの対処に迫られるなか、従来のシステムは柔軟な対応の妨げとなるだけでなく、膨大なデータの制御や処理を行い、最大限有効に活用するための計画機能や予測機能も備えていませんでした。我々はそうしたシステムの「重さ」とその複雑さに悩まされており、それらが機能的制約や技術的欠陥となっていたのです。役員会からはこうした融通性に欠けるプロセスに対する不満が上がるようになりました。標準原価の計算や、工場の生産量の変化に関する更新作業などに時間がかかっていたためです。

自社のレガシーシステムでこれらの障害を完全に克服するには、多額の投資と、極めて多くのリソースを費やす長期のプロジェクトが必要になります。そこでSEBは、既存のSAP BWベースの報告システムに加えて企業業績管理(EPM)ソリューションでこれらの課題を解消すべく、新たなプロジェクトに乗り出すことにしました。EPMソリューションによってプロセスにアジリティをもたらすとともに、グループの戦略的計画をカバーして、「アジャイル」手法を取り入れることが狙いだった、とMartelo氏は説明します。

柔軟なソリューションの導入を必要とする当社にとって、「アジャイル」手法は欠かせないものでした。優秀とは言い難い従来の手法では、予算を達成することも、期限に間に合わせることも不可能です。一方、「アジャイル」手法なら、可変要素はカレンダーや手段ではなくスコープとなり、いつでも目標を達成できるようになります。

選定プロセス:多様なアプリケーションを構築できる単一のプラットフォームを求めて

Groupe SEBの管理体制、基本データ、報告プロセス、およびツールの堅固性が、より軽量で柔軟性の高い企業業績管理ソリューションであり、わかりやすく使いやすい、直感的かつ視覚的で、より高いアジリティとスピード、最先端のレポート作成機能を備えたソリューションを、確信を持って導入する機会をもたらしたのです。

SEBのプロジェクトでは、以下の機能を事業上の主な優先事項に位置付けました。

  • スマートレポート:事業ニーズの進化と、SAP BWベースの既存システムの不十分な性能が原因で、既存のレポートは断片化されていました。そのため、新しいレポート作成ソリューションは、完全なレポートデータへの素早いアクセスと使いやすいナビゲーション機能を備えている必要がありました
  • 週次売上レポート:目的は、Groupe SEBが今後6か月の総収益に対する総合的な見通しが持てるようにすること、それが毎週更新されるようにすることでした。
  • 戦略的方向づけ:新しいソリューションは、履歴データに沿ってさまざまな階層レベルで「製品ライン」と「地域」ごとに損益計算書を生成するアプリケーションを提供することで、同グループの5か年計画の策定をサポートできる必要がありました。また、データ入力、ワークフロー、バージョン管理、データ統合、原価配分を、各種のキーと多様な軸でサポートできるものが求められました。
  • 業績:EPMソリューションは、多次元ウォーターフォール、分離スコープ、為替の影響、価格/数量/製品構成などを業績と関連付けて提示できなければなりませんでした。

企業業績管理ソリューションは、既存のBWベースのレポートに代わるもの、そして、計画、予算、予測、再予測を、月、四半期、年、複数年のビジョンに基づいて生成することで意思決定プロセスをサポートできるものである必要がありました。また、同じEPMプラットフォーム上で、シミュレーションと事業のモデル化を、調達価格、工場の固定費の吸収、What-ifシナリオに関連付けて実行できる機能も必要でした。

市場レビューが行われ、最終的にBoardのインテリジェント計画プラットフォームが選ばれました。Martelo氏はその決定の経緯をこう説明します。

11社のベンダーから始め、Boardのプラットフォームと市販の6つのEPMソリューションを比較した結果、完全性、性能、使いやすさにおいてBoardが最も優れた製品だという結論に至りました。当社は、限られた特定の側面に価値をもたらし、複数のソリューションの機能を向上させ、それらを同一プラットフォーム内にシームレスに統合したいと考えていたのです。

Finance Agile Smart Tools (FAST): Boardプロジェクト

この変革的なプロジェクトには、その目的を示す「FAST」という略称が付けられました。Martelo氏は、期待した成果について以下のように述べています。

「アジャイル」手法でBoardの性能と人間工学を利用した主な目的は、柔軟性を高め、シミュレーション機能を取り入れ、スマートで使いやすい複数の専用ソリューションから成る財務ツールボックスを漸進的に構築することでした。

SEBでのBoardプロジェクトの中心は、先述の「戦略的方向づけ」ソリューションに代表され、同社のマトリックス構造に基づいている、とMartelo氏は説明します。

2018年5月15日にBoardvilleで紹介されたGroupe SEBの簡略化された組織図

当社には3つの主要な戦略的事業部門(SBU)として、調理器具部門、キッチン家電部門、ホーム&パーソナルケア部門があり、主に戦略マーケティングと製品開発に注力しています。その役割は、未来の製品の構想、開発、製造や、グループ外からの調達です。これらのSBUは、プロフィットセンタではなく、「コストセンタ」と見なされています。その製品の販売先が社内の「販売地域」(大陸、エリア、市場)だからです。そこには、製品ラインや製品ファミリーごとに編成されたSEBの営業部門があり、次に、製品の責任が各ローカルチームに移り、ローカルチームはしかるべきSBUの監督のもとでそれらの製品の開発を行います。

SEBの事業モデルの第1レベルは、主に「製品」と「販売地域」という2つの軸で構成されています。そして第2レベルの軸は、ブランド、生産拠点、マーケティング、開発です。

戦略的事業計画は組織全体にわたって構築されます。このプロセスは、5か年計画の策定に役立つ、ベースラインとなる実績および予算の損益計算書(運営コストや売上成長を含む)をコーポレートファンクション部門が提案するところから始まります。次に、SBUがこの提案に合わせて独自の計画案を作成します(研究開発や製品の発売など)。

以前はこの戦略的計画の管理プロセスにスプレッドシートが使われていたため、ミスが発生しがちでした。融通性に欠けるExcelファイルのせいで、市場を問わずどのチームも、計画プロセスの前段階から受け取った運営コストなどの測定基準の制御と管理に苦労していました。そこで、Boardなら強力なオーナーシップを効果的に定義できるのではないかと考えたのです。今では、誰もが各自の経費に責任を持つようになり、すべての数字と測定結果を合計すれば、当グループの正確な業績が得られるようになりました。これは、コーポレート部門、SBU、大陸担当部門が異なる市場の経費を変更できないということでもあります。

特に戦略計画プロセスの最初の段階をよく見ると、Groupe SEBではBoardプラットフォームのシミュレーション機能を利用して、過去10年間の履歴データに関するデータベースラインを再処理することで、3つのキューブをフィードしていることがわかります。先述の同社の軸や次元(製品ファミリー、市場、製品ライン、エリアなど)に基づき、SEBはシミュレーションキューブをコーポレート部門レベルで1つ、SBUレベルで1つ、大陸担当部門レベルで1つ構築して、5か年事業計画をリリースします。Martelo氏は以下のように続けます。

当社では、Boardのシミュレーション機能をデータベースラインに適用しています。その理由として、当然ながら、当社の製品カテゴリが年々変化してきたことや、新しいブランドが当社のポートフォリオに追加されてきたことが挙げられます。従って、向こう5年間の計画を立てるには、過去に対する一貫した視点を持つことが重要になります。コーポレート部門が、グループの経費と販売目標の増加に関する具体的な前提を用意して、事業のモデル化プロセスを開始します。続いて、SBUがそれぞれの研究開発パイプラインと発売を予定している製品を提示したうえで、販売や、異なる地域にまたがる事業についても独自の見解を示します。最後に、大陸担当部門が主導して最終版の戦略的方向づけを提示し、このプロセスを終えます。

Groupe SEBでは、「戦略的方向づけ」ソリューションとともに、「スマートレポート」と呼ばれる処理も取り入れました。800以上のSAP BWベースのレポートをBoardで提供することにより、レポート作成プロセスで見られた断片化を解消したのです。今では、SAPで作成された、あるいはこれから作成されるすべてのレポートが(キャッシュフローの予測や再予測といった新しいものも含め)、Boardにも即座に送信されるようになりました。また、それらのレポートが直接Boardで作成される場合もあります。

Groupe SEBのレポート作成プロセスでは、同社が「週次売上レポート」と呼ぶソリューションがBoardプラットフォーム上で特に優れている、とMartelo氏は説明します。

Boardの環境内で生み出されたこのソリューションのおかげで、世界中に150ある子会社からの週次売上見込みを一元化できました。毎週、各子会社から当月および来月以降(最大6~12か月分)の売上予測が経営陣に送られてきます。それらのレポートでは、1つの数字が示されている場合と、2つの数字に分けられている場合があります(ブランド単位や流通チャネル単位など、追跡したい項目によって異なります)。また、この一元化をサプライチェーンのS&OPにまで徐々に拡大する予定なので、売上予測と運用を統合し、Boardの統合プラットフォームの特性を活かしていきたいと考えています。

Boardのインテリジェント計画プラットフォームモデルは、エンドツーエンドの手法に適しています。戦略面および財務面での計画や分析と組み合わせれば、Groupe SEBのような複雑な組織の業績を取り込むことも可能です。SEBではこれらの機能を利用して、「業績結果分析(ROPA)」と呼ばれるソリューションを導入しました。 Martelo氏はこう続けます。

いくつかの結果を切り分けて、ある年の業績から翌年の業績への推移を評価できます。また、マーケティング費、宣伝広告費、その他構造上の経費を区別して、運営コストに対する明確な視点を得ています。

BoardがいかにSEBの期待を超えて「雪だるま効果」を生み出したか

Boardを導入したことにより、SEBの戦略的計画業務の柔軟性は大きく向上しました。各地域担当部門が、提案された損益計算書を基にそれぞれの計画を練ることが可能になっただけでなく、デフォルトで、損益計算書の運営コストが売上の変化に応じて、トレンド率に基づき変化します。ユーザはこのプロセスに沿って一進一退しながら、売上、宣伝広告の手段、運営コストの額などを調整できます。

Boardのプラットフォームでは当社の計画プロセスが、協調的で、反復的で、柔軟性の高いものになりました。戦略的方向づけレベルでのシミュレーションプロセスから得られるコーポレート部門、SBU、大陸担当部門の3つのバージョンはそれぞれ独立していますが、どのチームも他チームが作成したバージョンを確認して、そのデータに基づいて自チームのデータを入力することが可能です。

「戦略的方向づけ」ソリューションは、SEBでのBoardプロジェクトの要であり、経営陣から高い評価を得ています。この製品が持つ特性の中で最も称賛を受けているのは、Boardの「スプリット&スプラット(split & splat)」機能です。この機能を利用すると、最も詳細なレベルまであらゆるバリエーションを即座に分散・展開できるので、ビジネスユーザにとってインタラクティブなシミュレーションでの大きなサポートとなります。

戦略的計画とシミュレーションに役立つBoardのソリューションには、とりわけ満足しています。導入における今後の段階や、当社が開発を目指している新たなアプリケーションについて、多くのアイデアが得られます。例えば、当社はこのソリューションに、ローカルシナリオ管理に役立つバージョン管理のロジックという新機能を追加しました。

BoardのSAP用コネクタでサポートされているため、レポート作成プロセスや分析プロセスも大きく向上し、Martelo氏が言うところの「雪だるま効果」を生み出しています。

当社にとってBoardは、最先端の分析サービスを網羅するソリューションであると同時に、すべての技術的・機能的要件に効果的に対応できる拡張性と柔軟性に優れた計画ソリューションです。Boardを利用することで得られたさまざまな事業上のメリットの中から1つ挙げるなら、私は一種の「雪だるま効果」を挙げたいと思います。新しいレポートの導入にかかる時間が大幅に短縮され、財務部門も経営陣も、新しいアプリケーションのプロトタイプやモックアップを作成して、財務用ツールボックスに加える新たなツールやソリューションを生成できるようになりました。ほかにも、Boardのおかげで、使われなくなったレポートデータを現在の階層に基づいて再処理し、将来の動向予想に利用することで、さらなる価値をもたらすことも可能になっています。

こうした雪だるま効果によって速やかに問題を解決できるようになったことで、新たな計画アプリケーションの管理や保守、導入におけるGroupe SEBの自己完結能力が上がりました。これが実現したのはBoardならではのプログラミング不要の手法のおかげでもあるというMartelo氏は、次のように締め括ります。

ソリューションの導入が迅速かつ効率的に行えるようになり、チームの参加意欲が非常に高まりました。私たちは多くのプロジェクトでBoardの利用を検討していますが、あらゆる面で期待に応えてくれます。


この導入事例で示した内容および見解は、2018年5月15日のBoardvilleイベントでGroupe SEBが発表した情報に基づくものです。


Groupe SEBでのBoardの進化は続く

Boardのアジャイルなインテリジェント計画プラットフォームを主な計画業務に完全に組み込んだ同社は現在、計画・運用でのさらなる改善領域を検討中です。進行中または予定されているイニシアチブには以下のようなものがあります。

  • セールス&オペレーションズプランニング(S&OP)によるサプライチェーン管理:Groupe SEBはBoardのプラットフォームをサプライチェーン管理に取り入れ、セールス&オペレーションズプランニング(S&OP)によって業務の最適化と需要予測の強化を図りました。
  • Boardの環境・社会・ガバナンス(ESG)ソリューションによるカーボンフットプリントの削減:Groupe SEBでは、Boardの分析機能とレポート作成機能を利用してカーボンフットプリントの測定と削減に重点を置くことで、ESGの要素を戦略的計画に組み込んでいます。
  • Boardの「アジャイル」手法による輸送費の変動への対応:Groupe SEBでは、Boardの「アジャイル」手法とシミュレーション機能を取り入れてコスト管理と業務効率を最適化させることで、輸送費の高騰に直面すると即座にシナリオをモデル化し、影響を分析して、戦略を適応させています。